船におけるピッチングとは船首や船尾が上下に揺れる現象のことです。丁度シーソーで遊んでいるときの様子をイメージすると分かりやすいでしょう。ピッチングが発生するのは前後からやってくる波が原因です。船の全長が短いほど波長を拾いやすく、結果としてピッチングが起きやすくなります。すなわち揺れが酷くなるということです。逆にいえば、波長よりも船の全長のほうが長い大型船などでは波長による影響を受けづらくなり、ピッチングによる揺れは少なくなります。「大船に乗った気持ち」という比喩がありますが、まさに大きな船ほど揺れが少なく安心していられるのです。特にピッチングについてはその傾向が顕著です。これはなぜかというと、波長に比べて全長が十分に長い場合、波の凹凸を船全体で相殺してくれるからです。一方、全長がそこまで長くない中小型船にとってはピッチングの影響を受けやすいので、乗り心地改善のための対策が必要となります。その一例として挙げられるのは船首の船底にフィンを取り付けたアンチピッチングフィンです。このフィンを付けた状態で航行させると揚力や抗力が発生し、それらの上下方向の分力がピッチングによる縦揺れを減らす力となるのです。さらにはこの動作を自動制御化することでより効果的に揺れを減らすことが出来るという実証結果が出ています。
一方、大きな船だからといって油断は禁物です。積載している貨物類が揺れで動き出さないよう注意を配る必要があります。なぜなら一度動き出した荷物を止めることは困難だからです。動いている物体の摩擦力は静止している物体のそれよりも小さくなるので、重量がある荷物が滑り始めてからでは人の手では止められません。よって荷物類は船体に紐で縛り付け固定するなどして、不意の揺れに対して十分な事前対策が必要です。なお、ピッチングの動きに近いものとしては、船全体が上下動するヒービングという現象もありますが、船体に対して人の大きさは相対的に十分小さいので、人自身が感じる揺れの種類としてはピッチングとローリング（左右の揺れ）に集約されるといっても良いでしょう。
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